市街化調整区域の土地は買って大丈夫?購入前に確認したい6項目

市街化調整区域の土地を探していると、市街化区域と比べて坪単価が安く、広い土地が見つかることがあります。

そのため、

「価格が安いから買っておこう」
「隣の人が家を建てられたのだから、自分も建てられるだろう」
「すでに家が建っているから建て替えもできるだろう」

と考えてしまうかもしれません。

しかし、市街化調整区域では、土地を所有できることと、希望する建物を建てられることは別問題です。

また、坪単価が安くても、最低敷地面積の制限によって広い土地を購入する必要があったり、道路・排水・上下水道・造成などに費用がかかったりすると、最終的な取得・整備総額が市街化区域の土地と大きく変わらない場合もあります。

市街化調整区域は都市計画法上「市街化を抑制すべき区域」であり、開発行為については都市計画法第34条の立地基準により、許容される類型が限定されています。

一方で、「市街化調整区域だから何も建てられない」という意味でもありません。

重要なのは、

その土地で、誰が、何を建て、どのように利用するのか。そして、そのために総額でいくら必要になるのか

を購入前に確認することです。

この記事では、市街化調整区域の土地を購入する前に最低限確認したい6項目を解説します。


1.どの「立地基準」に該当する土地なのか

最初に確認したいのは、その土地で予定する建築・開発が、どの立地基準に該当する可能性があるのかです。

市街化調整区域では、市街化区域と同じように自由に住宅や事業所を建てられるわけではありません。

都市計画法第34条では、市街化調整区域で許容される開発行為の類型を定めています。国土交通省も、第34条を市街化調整区域にのみ適用される「立地基準」と位置付けています。

例えば、

  • 周辺住民の日常生活に必要な店舗等
  • 農林水産物の処理・加工等の施設
  • 地区計画に適合する開発
  • 条例で指定された区域における一定の開発
  • 地域の事情に応じ条例で定められた一定の開発

などがあります。

したがって、

「市街化調整区域=建築不可」

でも、

「地目が宅地=建築可能」

でもありません。

購入前には、予定している土地利用がどの立地基準を根拠として成立するのかまで確認することが重要です。

2.土地だけでなく「誰が建てるのか」で立地できるかが変わる

市街化調整区域の大きな特徴は、土地そのものの条件だけでは「住宅を建てられる土地か」を判断できない場合があることです。

その代表例として、一般に「分家住宅」と呼ばれる自己用住宅があります。

ただし、ひと口に分家住宅といっても、都市計画法第34条第12号に基づく自己用住宅には複数の立地基準があります。

例えば坂戸市や鶴ヶ島市では、

  • 線引き前から所有している土地を利用する自己用住宅
  • 市街化調整区域に長期間居住している者の親族が建築する自己用住宅
  • 線引き前から市街化調整区域に居住している者の親族が建築する自己用住宅

などが、それぞれ別の立地基準として定められています。

ここでは、このうち「市街化調整区域に長期間居住している者の親族が建築する自己用住宅」を例に説明します。

この立地基準では、単に「その土地が市街化調整区域にある」というだけでは住宅を建築できません。

例えば坂戸市や鶴ヶ島市では、市街化調整区域に20年以上居住する親族がいることなどを要件として、都市計画法第34条第12号による自己用住宅が認められる場合があります。ただし、対象となる親族の居住地域や具体的な申請要件は自治体によって異なります。

つまり、同じ土地であっても、

Aさんは親族の居住要件を満たすため住宅を建てられるが、その土地を購入したBさんは同じ要件を満たさず、同じようには建てられない

ということがあり得ます。

これが、市街化調整区域の土地を購入する際に特に注意したい点です。

市街化区域で土地を購入するときは、用途地域や接道など、土地そのものに関する条件が建築可否を判断する大きな要素になります。

一方、市街化調整区域では、用途や接道など土地そのものの条件だけでなく、「誰が、何を建てるのか」によって建築の可否が変わる場合があります。

したがって、

「隣に住宅が建っているから、この土地にも住宅が建つだろう」

という判断は危険です。

隣の住宅は、その所有者やその親族関係などを根拠として、特定の立地基準により認められた住宅かもしれません。

「その土地に家が建てられるか」ではなく、「自分が、その土地に、その用途の建物を建てられるか」を確認する。

市街化調整区域では、この視点が重要になります。

※都市計画法第34条第12号に基づく具体的な立地基準や親族・居住・土地所有等の要件は、許可権者によって異なります。実際の購入にあたっては、土地所在地を管轄する行政庁への個別確認が必要です。

3.「今、家が建っている」からといって、誰でも使えるとは限らない ― 許可の属人性

市街化調整区域の中古住宅では、もう一つ注意しなければならない問題があります。

それが、開発許可等の「属人性」です。

「属人性」は都市計画法に定義された法律用語ではありませんが、実務上、特定の人の資格や事情を前提として認められた許可という意味で使われます。

先ほどの分家住宅が分かりやすい例です。

仮にAさんが、

「市街化調整区域に長期居住する親族がいる」

などの条件を満たしたため、Aさん自身が住む住宅として許可を受けたとします。

その住宅が後に売りに出されたからといって、

買主Bさんが当然に同じ条件で住宅として使用・建て替えできるとは限りません。

埼玉県の開発許可制度の解説でも、特定の者の専用住宅として許可された建築物について、使用者を別人に変更することが都市計画法上の「用途変更」として扱われ得る事例が示されています。いわゆる分家住宅についても、許可を受けた本人から別人へ使用者が変わる場合の取扱いが例示されています。

したがって、市街化調整区域の中古住宅を購入するときには、

  • いつ建築されたのか
  • どの条文・立地基準で許可されたのか
  • 誰の自己用住宅として許可されたのか
  • 現在の使用者と許可を受けた者は同じか
  • 第三者が購入してそのまま使用できるのか
  • 将来建て替えることができるのか
  • 売却時に次の買主にも同じ問題が生じないか

まで確認する必要があります。

重要なのは、

「建物が合法的に存在している」ことと、「誰が購入しても自由に利用できる」ことは同じではない

という点です。

市街化調整区域の不動産では、建物を見るだけでなく、その建物が存在できている法的な根拠まで確認することが重要です。

なぜ市街化調整区域の規定は複雑なのか

市街化調整区域の立地基準が複雑なのには、制度の歴史が関係しています。

埼玉県では昭和45年8月25日に、市街化を進める「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」に分ける、いわゆる線引きが行われました。

この時点ですでに住宅が建っていた土地や、従前から所有・利用されていた土地がある一方で、線引き後に新たな住宅や市街地が無秩序に広がることは抑制しなければなりません。

そのため市街化調整区域では、既存の土地利用や従前からの権利関係に一定の配慮をしながら、新たな立地については厳しく制限するという考え方が制度の基本になっています。

さらに平成12年前後の地方分権と都市計画法改正によって、開発許可に関する地方公共団体の役割が大きくなり、地域の実情に応じて条例で立地基準を定める仕組みが整備されました。

現在の34条11号・12号などの立地基準には、こうした制度の積み重ねがあります。

その結果、市街化調整区域では、単に「住宅が建てられる土地か」を見るだけでは足りません。いつからその土地や建物が存在しているのか、誰が所有・利用してきたのか、誰が建てるのか、どの立地基準に該当するのかを確認し、必要に応じて過去の許認可や手続きの経緯まで遡って調べる必要があります。

4.道路のように見えても「建築基準法上の道路」とは限らない ― 山林分譲購入の例

市街化調整区域の土地で、特に判断を誤りやすいのが道路です。

例えば、山林が造成され土地を販売しているケースを考えてみます。

現地を見ると、

  • 自動車が通れる
  • 舗装されている
  • 長年通路として使われている
  • 土地が道路状になっている

という状況であれば、

「前面道路があるから家も建てられるだろう」

と考えてしまいがちです。

しかし、現況が道路であることと、建築基準法上の道路であることは別問題です。

建築基準法では、原則として建築物の敷地が同法第42条に定める道路に接することを求めています。単に人や車が通行できる道が存在するだけでは、この条件を満たすとは限りません。

今は大分減りましたが、過去には山林を造成し、道路状の通路と複数の区画を設けて販売された土地もあります。

しかし、現地に道路状の通路があるからといって、それが建築基準法第42条の道路とは限りません。

その土地を畑や資材置場など建物を伴わない用途で利用することができても、住宅等を建築しようとすると、接している通路が建築基準法上の道路ではないため、接道要件を満たさないことがあります。

この場合、原則としてそのまま建築することはできません。
建築基準法第43条第2項による認定・許可を受けられる可能性はありますが、これは接道義務の例外として設けられた制度であり、厳格な要件を満たす場合に限られます。

つまり、「道路のようなものがあるから建てられる」と判断するのではなく、その道が建築基準法上どのように扱われているのかを、購入前に確認することが重要です。

「土地まで車で行ける」
=
「建築できる」

ではありません。

土地が販売されていた場合には、少なくとも、

  • 接している道が建築基準法第42条のどの道路に該当するのか
  • 必要な接道長を確保できるか
  • 道路幅員は足りているか
  • 建築基準法上の道路でない場合に認定・許可等の可能性があるか
  • 開発許可上、別途必要となる道路条件を満たすか

を購入前に確認する必要があります。

特に注意したいのは、登記上の地目や現況写真だけでは道路の法的な位置付けは判断できないことです。

「道路があるように見えるから大丈夫」ではなく、行政庁で道路種別まで確認することが必要です。

接道義務や再建築不可物件について詳しくはこちら

5.農地なら「転用できるか」まで確認する

市街化調整区域では、田や畑などの農地が売りに出されていることもあります。

住宅や事業用地として利用する場合は、都市計画法上の立地可否に加え、農地法上、農地転用が可能な土地かどうかも確認する必要があります。

さらに農用地区域、いわゆる農振農用地の場合には、農地転用の前段階として農用地区域からの除外が必要となる場合があります。

したがって、

都市計画法上は建築できる可能性があるが、農地法・農振法上の問題で予定どおり利用できない

ということも考えられます。

市街化調整区域の農地を購入するときは、立地基準と農地転用の可否をあわせて確認することが重要です。

農地転用・開発許可について詳しくはこちら

6.「坪単価」ではなく、敷地面積・インフラ・水害リスクまで含めて判断する

市街化調整区域の土地は、市街化区域より坪単価が安く見えることがあります。

しかし、坪単価だけで「安い土地」と判断するのは危険です。

最低敷地面積が定められている場合がある

自治体の条例などによって、市街化調整区域の開発について最低敷地面積が定められている場合があります。

都市計画法の制度上も、地方公共団体が条例によって最低敷地規模に関する制限を付加することが認められています。

例えば坂戸市・鶴ヶ島市の条例では、市街化調整区域の開発について、原則として予定建築物の最低敷地面積を300㎡とする規定があります。適用基準は許可権者や地域によって異なるため、個別の確認が必要です。

そのため、坪単価が市街化区域の半分であっても、必要となる敷地面積が2倍であれば、土地代の総額は大きく変わらない場合があります。

さらに、前面道路の状況によってセットバックが必要となる場合には、実際に利用できる敷地面積が減少するため、条件によっては市街化区域の土地より割高になることもあります。

したがって、

「調整区域だから坪単価が安い」

だけでは購入メリットを判断できません。

実際に必要となる最低敷地面積を掛けた総額で比較することが重要です。

インフラ整備費も確認する

さらに市街化調整区域では、場所によって、

  • 上水道
  • 公共下水道
  • 雨水排水施設
  • 道路
  • 側溝
  • 水路

などの整備状況が市街化区域とは異なることがあります。

その場合、

  • 上下水道の引込み
  • 浄化槽
  • 排水施設
  • 道路整備
  • 盛土・切土
  • 擁壁
  • 地盤改良

などに追加費用が発生することがあります。

したがって比較すべきなのは、

土地代だけではなく、実際に利用可能な宅地にするまでの総額です。

造成・排水・インフラまで確認して土地を取得した実例はこちら

ハザードマップだけで水害リスクを判断しない

水害リスクを確認する際、まず洪水・内水ハザードマップを見ることは重要です。

ただし、ハザードマップだけを見て「浸水想定区域ではないから安全」と判断するのは十分ではありません。

ハザードマップは一定の条件を前提として地域全体の浸水リスクを示すものであり、個々の土地について、周辺道路との高低差や排水状況、造成後の宅盤高さまで評価しているものではありません。

そのため、土地を購入する際には、ハザードマップに加えて、

  • 雨水をどこへ排水する計画なのか
  • 敷地周辺に水路や側溝などの排水先があるか
  • 排水先まで十分な高低差を確保できるか
  • 周辺道路や隣接地より現在の敷地が低くないか
  • 周囲から雨水が流れ込む地形になっていないか
  • 周辺の水路や側溝に十分な排水能力があるか
  • 過去に道路冠水や浸水が発生していないか
  • 洪水・内水ハザードマップではどのように評価されているか

などを現地の状況と合わせて確認する必要があります。

さらに、これから造成する土地では、現在の地盤高さだけではなく、造成後の「計画宅盤高」を確認することが重要です。

例えば現在は周辺道路より低い土地であっても、適切な盛土を行い、道路や隣接地より十分な宅盤高さを確保するとともに、雨水を適切な排水先へ流せる計画になっていれば、リスクを低減できる場合があります。

反対に、ハザードマップ上では大きな浸水リスクが表示されていなくても、

計画宅盤高が低い、雨水の排水先がない、周辺道路や隣接地から水が集まりやすい

といった条件が重なれば、局地的な大雨などの際に敷地内へ水が滞留する可能性があります。

つまり、水害リスクは、

ハザードマップ
+ 周辺地盤・道路の高さ
+ 計画宅盤高
+ 雨水の排水先
+ 周辺水路・側溝の状況

を一体として確認する必要があります。

特に市街化調整区域では、従前が農地や山林であった土地を造成して宅地化することもあるため、「今の土地が浸水するか」だけでなく、「造成後にどの高さで宅地をつくり、雨水をどこへ逃がすのか」まで確認してから購入を判断することが重要です。

市街化調整区域は「安い土地」とは限らない

市街化調整区域には、市街化区域より坪単価が安い土地があります。

しかし、

坪単価が安い
= 家を安く建てられる

とは限りません。

最低敷地面積によって広い土地が必要になれば土地代総額は増えます。

さらに、

道路、上下水道、排水、造成、擁壁などの整備が必要になれば、総事業費が市街化区域の土地と大きく変わらなくなる場合もあります。

一方で、条件が整っている土地であれば、広い敷地を確保できるなど、市街化調整区域ならではのメリットもあります。

重要なのは、

「安いから買う」のではなく、「なぜ安いのか」を確認して買うこと

です。

購入前には、少なくとも次の6点を確認します。

  1. 予定する建築がどの立地基準に該当するか
  2. 誰が・何を建てる場合に建築可能なのか
  3. 既存建物の建て替えが可能なのか
  4. 接道条件を満たしているか
  5. 農地転用・農振除外が必要か
  6. 最低敷地面積、インフラ、排水、水害リスクを含めて合理的な土地か

市街化調整区域では、契約してから調べるのではなく、契約する前に建築・利用可能性を確認することが重要です。

当事務所では、単なる不動産取引にとどまらず、一級建築士としての知見を生かし、都市計画、開発許可、農地転用、道路・排水などを横断的に確認し、その土地を実際に利用できるかという視点から課題を整理しています。

「価格は魅力的だが、本当にこの土地を買ってよいのか」

という段階で確認することで、購入後に予定していた利用ができないリスクを減らすことができます。

※具体的な立地基準、最低敷地面積、開発・建築基準等は許可権者や地域によって異なります。実際の土地については所在地を管轄する行政庁への個別確認が必要です。