農地は宅地にしてからでないと売れない?売却前に確認したい6項目

「使っていない畑を売りたい」

「農地のままだと安いから、宅地にして売った方がいいのでは?」

農地の売却を考えたとき、まず知っておきたいのは、同じ農地でも場所によって転用のしやすさが大きく異なることです。

農地転用の制度では、農地の優良性や周辺の土地利用状況などに応じて、おおむね、

農用地区域内農地
甲種農地
第1種農地
第2種農地
第3種農地

などに区分されます。農林水産省も、優良農地を守るため、農地を区分して転用を農業上の利用に支障が少ない土地へ誘導する仕組みとしています。

転用の考え方も同じではありません。

農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地
→ 原則として転用が厳しく制限される

第2種農地
→ 他の土地で目的を達成できない場合など、一定の条件で転用を検討できる

第3種農地
→ 市街地化が進んだ区域などにある農地で、原則として転用が認められる方向

という大きな違いがあります。

さらに、市街化区域内の農地については、原則として農業委員会への届出により農地転用が可能で、4条・5条の転用許可は不要です。

したがって、

「畑だからいくら」

ではなく、

「どこにある農地で、どのような利用が可能なのか」

によって、売却方法も土地の価値も大きく変わります。

1.「農地として売る」のか「転用を前提に売る」のか

農地の売却には、大きく分けて2つの考え方があります。

農地法3条|農地のまま売る

農地を農地として利用する目的で売買する場合には、原則として農地法第3条の許可が必要です。

この場合、買主は単に土地を所有したい人ではなく、取得した農地を耕作する者など、農地法上の許可要件を満たす必要があります。

つまり、一般の宅地のように、

「土地が欲しい人なら誰でも買える」

わけではありません。

買主の範囲が農業利用する人に限られるため、売却先も限定されます。

農地法5条|転用する人へ売る

一方、

住宅を建てたい
店舗や事業所を建てたい
駐車場にしたい
資材置場として利用したい

といったように、買主が農地以外の用途で利用することを目的として農地を取得する場合には、原則として農地法第5条の手続きになります。埼玉県も、第5条を「農地を農地以外にするために権利移動・設定をする場合」と整理しています。

この場合、買主が農業従事者である必要はありません。

重要なのは、

買主が何のために土地を取得するのか

そして、

その転用計画が農地法や都市計画法などの基準を満たして実現できるのか

です。

ここが農地売却では非常に重要です。

農地として売る場合には買主が限定されますが、住宅や事業用地などへの転用可能性が確認できれば、購入できる人の範囲が大きく広がります。

そのため一般には、農地としてしか利用できない土地よりも、宅地や事業用地として利用できる土地の方が、販売価格を高く設定できる可能性があります。

ただし、

転用できる=高く売れる

とは限りません。

造成、上下水道、排水、道路、擁壁などに多額の費用が必要であれば、その費用は土地価格に反映されます。

したがって農地売却では、

「農地としていくらか」ではなく、「転用後に何として利用でき、そこまでにいくらかかるのか」

まで調べることが重要です。

農地は「契約すれば所有権が移る」とは限らない

農地の売買では、通常の土地売買とは異なり、契約を締結して代金を支払えば、それだけで所有権を移転できるわけではありません。

農地法第3条または第5条の許可が必要な取引では、必要な許可を受けなければ権利移転の効力は生じず、所有権移転登記も行うことができません。

そのため実務では、農地法上の許可を得られることを前提として契約を締結し、許可が得られなかった場合の解除や受領済み金銭の返還についても、契約書であらかじめ定めておくことが重要です。

つまり、農地売買では、

契約 → 農地法上の許可・届出 → 決済 → 所有権移転登記

という流れを意識する必要があります。

なお、農地転用の許可や届出をしただけで、登記上の地目が自動的に宅地へ変わるわけではありません。実際に転用目的どおり土地利用が変わった後、必要に応じて地目変更登記を行います。

2.農業をしない人でも農地は相続できる

農地法では、農地を農地として売買する場合には原則として第3条の許可が必要です。

一方、相続によって農地を取得する場合には、農地法第3条の許可は必要ありません。

そのため、農業をしていない子どもが、親の自宅と一緒に畑や田を相続することもあります。

ただし、相続によって農地を取得した場合には、農地法第3条の3に基づき、農地の所在地を管轄する農業委員会への届出が必要です。農林水産省では、相続発生からおおむね10か月以内の届出を案内しています。相続登記とは別の手続きです。

相続できても、管理できるとは限らない

農業をしていない相続人にとって、

草刈り
水路の管理
害虫・害獣対策
周辺農地への影響

など、農地を適切に維持することは大きな負担になる場合があります。

特に相続人が遠方に住んでいる場合には、定期的に現地を確認すること自体が難しくなります。

また、耕作されず遊休農地となった場合には、農業委員会による利用状況調査や利用意向調査の対象となり、その後の利用について確認を求められることがあります。意向どおりの利用が行われない場合には、農地バンクとの協議を勧告される制度もあります。

実家と農地を一緒に相続しても、そのまま一括で売れるとは限らない

例えば、

宅地に建つ実家+隣接する畑

を一緒に相続した場合、相続人としては、

「家と畑をまとめて売りたい」

と考えるでしょう。

しかし、農地部分を農地のまま住宅敷地として一般の住宅購入者へ売却し、所有権移転登記をすることはできません。

農地として売却するのであれば農地法第3条、住宅敷地などへの転用を前提として売却するのであれば農地法第5条など、農地部分について別途手続きが必要になります。

そのため、農地転用ができない土地であれば、

実家の宅地部分は売却できても、農地だけが売れ残る

ということも考えられます。

特に非農家が農地を相続した場合には、

「相続できること」と「自由に売却できること」は別

と理解しておく必要があります。

3.売主が先に農地転用する必要はない

農地転用では、主に農地法第4条と第5条が使われます。

4条:所有者自身が農地を農地以外の用途に転用する
5条:売買や賃貸などの権利移動を伴って農地を転用する

という違いがあります。

そのため、農地を売却するからといって、

「売主が先に4条で農地転用してから売らなければならない」

わけではありません。

例えば、買主が住宅を建てる目的で農地を購入するのであれば、買主の住宅建築という具体的な転用目的に合わせて、売主と買主が5条の手続きを進めることができます。

この方法であれば、売主が自ら建物を建てたり、先に転用工事を行ったりしてから売却する必要はありません。

なお、市街化区域内の農地では、原則として転用許可ではなく、あらかじめ農業委員会へ4条または5条の届出を行う制度となっています。手続きそのものが不要になるわけではありません。

したがって、農地を売却するときに最初に考えるべきなのは、

「先に宅地にしておくか」ではなく、「誰に、何の用途で売るのか」

です。

4.最初に「農用地区域」に入っていないか確認する

農地転用を考えるときに、都市計画区域だけを確認してはいけません。

重要なのが、農業振興地域制度です。

特に市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域に指定されている土地は、原則として農地以外への転用が認められません。

転用するためには、まず農用地区域から除外するための農用地利用計画の変更、いわゆる農振除外が必要となり、その後に農地法による転用許可を受けることになります。

ここで注意したいのは、

農業振興地域=すべて転用できない

ではないことです。

農業振興地域の中でも、農用地区域に指定された土地と、それ以外の土地では扱いが異なります。

そのため農地を売却する場合には、

市街化区域・市街化調整区域
だけでなく、

農業振興地域か
農用地区域か

まで確認する必要があります。

5.「農地転用できる」と「建物を建てられる」は別

ここは特に重要です。

農地転用の許可を受けられても、

その土地に住宅や事業所を建てられるとは限りません。

農地法は、あくまで農地を農地以外の用途に転用できるかを判断する制度です。

例えば市街化調整区域では、農地法とは別に、都市計画法上の開発許可や建築許可が必要となる場合があります。市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であり、開発・建築できる用途も限定されています。

さらに実際に土地を利用するには、

接道・道路幅員
雨水・汚水の排水先
上下水道
造成
擁壁

なども確認しなければなりません。

農地転用の審査においても、転用目的の実現可能性、必要な資金、周辺農地への影響、計画規模に加え、都市計画法など他法令の許可等の見込みが確認されます。

そのため、建築を目的とした農地転用では、農地法だけを先に進めるのではなく、都市計画法や建築基準法などの関係法令についても並行して協議・確認し、行政庁によっては申請や許可の時期を調整しながら進めることがあります。

つまり、

農地転用は、目的とする土地利用を実現するために必要な手続きの一つにすぎません。

「農転できるらしいから宅地として売れる」と判断するのではなく、

買主が予定している用途を、その土地で本当に実現できるのか

まで確認してから売却条件を決めることが重要です。

市街化調整区域の土地を購入する前に確認したい6項目はこちら

農地転用・開発許可について詳しくはこちら

6.「宅地にすれば高く売れる」とは限らない

農地と宅地では、一般的に宅地として利用できる土地の方が購入者の範囲は広がります。

しかし、

農地転用できれば必ず土地の価値が大きく上がる

とは限りません。

例えば、

上下水道の引込みが必要
盛土が必要
道路を整備する必要がある
排水先がない
擁壁の設置が必要

といった土地では、利用可能な状態にするまでに大きな費用がかかることがあります。

仮に農地として1,000万円、宅地として2,000万円の価値があるとしても、擁壁の築造を伴う造成工事では、造成費だけで1,000万円以上かかる場合もあります。

そのため、単純に「宅地にすれば高く売れて得になる」とは限りません。

重要なのは、

農地価格と宅地価格の差

だけを見るのではなく、

その土地を実際に利用できる状態にするまでに、どのくらいの費用がかかるのか

まで含めて判断することです。

7.売却する前に「誰に売れる土地なのか」を調べる

農地を売る場合には、いきなり価格査定だけをするのではなく、

どのような買主が購入できる土地なのか

を確認した方がよいでしょう。

大きく分ければ、

農地として農業利用する人へ売る

という方法と、

住宅・事業用地などへの転用を前提として売る

という方法があります。

特に後者では、

農地転用できるか
都市計画法上利用できるか
接道・排水などに問題がないか
造成費はいくらか

によって、買主が支払える土地価格が変わります。

農地転用制度自体も、具体的な土地利用を伴わない資産保有・投機目的の農地取得を防ぎ、転用事業の実現可能性を審査する仕組みです。

そのため、

「とりあえず宅地にしてから売ろう」

と考えるのではなく、

土地の条件を調べ、利用可能な用途を整理してから売却方法を決める

ことが重要です。

造成・排水・インフラまで確認した土地取得の実例はこちら

登記面積と実際の面積が違う場合もある

もう一つ、農地を売却するときに確認したいのが土地の面積です。

古くから所有されている土地では、登記簿に記載された地積と実際に測量した面積が一致しないことがあります。法務省も、登記簿の地積と実測面積が異なる場合に地積更正登記を行う制度を案内しています。

登記面積より実測面積が大きい、いわゆる「縄伸び」がある土地では、公簿面積だけを基準に売買すると、実際より少ない面積で土地価格を算定してしまう可能性があります。逆に、実測面積の方が小さい場合もあります。

そのため、特に面積を基準として売買価格を決める農地では、売却前に測量を行い、実際の面積を確認しておくことをおすすめします。

境界についても不明確な場合には、必要に応じて隣接地所有者との境界確認まで行ったうえで、

「公簿面積で売買するのか」
「実測面積で売買するのか」
「実測後に差額を精算するのか」

を契約時に明確にしておくことが重要です。国土交通省の土地取引関係書類でも、公簿面積とは別に「実測清算」を行う契約を想定しています。

まとめ|農地は「宅地にしてから売る」だけではない

農地の売却には、

農地として売る

という方法と、

農地転用を前提として売る

という方法があります。

そして農地転用を前提とする場合でも、売主が先に宅地へ転用しなければならないとは限りません。

重要なのは、

都市計画
農用地区域
農地転用の可否
建築の可否
道路・排水・インフラ
造成費

を確認し、

その土地を誰が、どのように利用できるのか

を整理することです。

農地は、条件によって売却方法も価値も大きく変わります。

「農地だから安い」「宅地にすれば高く売れる」と単純に判断せず、利用可能性と必要な費用を確認したうえで売却方法を決めることが重要です。